北海道記

 去年の晩夏、北海道の礼文島に一人旅に行った。いろんな意味で思い出深い旅となったが、記録に残さないとどんどんと忘れていってしまうのは明らかである。ということで、細部は思い出しながらということになるが、ここに少し記録しておこうと思う。

 

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【旅の縁起】

毎年というわけではないが、自分は毎年一回程度僻地に一人旅に行く。といっても、そのパターンができたのは数年前くらいだから、そんなに昔からということではない。仕事を始めた当初は京都などに一人旅に行って、祇園でもない片隅の酒場で潰れたりしていた。転機となったのは3、4年前ほどにいった長崎野崎島旅行で、携帯も繋がらず、食料飲料も全て持ち込みのみ、島にいる人は(ほぼ)自分だけ、という状況で、無人の教会でSFを読んだり、あてもなく島を散策したり、非常によい旅だった(これもいつかは詳しく書きたい)。そこで思ったのは、一年に一回くらいは人のいないところに行くのは自分にとって極めて重要なのではないか、ということだった。ということで、それ以降僻地にちょいちょい赴くことが習慣となった。

とはいえろくに車の運転もできないので、「本物の僻地」のようなところに行くのは難しい。2回目は鹿児島の内之浦で、実家近くのバーのマスターにお世話になった。内之浦は「本物の僻地」といってそれほど差し支えない場所だが、マスターの多大なるご厚意(車、宿、食事…)にあずかり堪能することができた(本当によいところだった。これもいつか記録に残したい)。今回記録しようとしている北海道の礼文島は、だから旅としては3回目となる。稚内までは飛行機、稚内から礼文島は船、礼文島内は徒歩やバス。公共交通機関と自分の足のみの旅となる。正直難易度としては初中級くらいなわけだが、修行でもあるまいし、観光なんだからというコンセプトである。後から振り返ると、幸か不幸か、いろんな巡り合わせによって「観光旅行」から「旅」に変わっていったわけであるが。

礼文島にした理由は、特段の事情があったわけではない。離島の旅行先を調べていて、その中に礼文島があった。旅行時期は9月初頭、その時期にはまだ多少花が咲いていて、ウニのシーズンもギリギリ重なっているという頃合いだった。人が少なそうなのがポイントだった。礼文島の観光最盛期は6月から8月にかけてである。固有種のレブンウスユキソウが咲き、ウニもとれ、なにより避暑地として素晴らしい。最盛期と比べると、9月は見所に乏しい。花もウニも終わりかけ、季節はいささか肌寒くなってくる頃合いである。秋は秋でお祭りがあるが、オータムフェスタは9月中旬である。ということで、9月の初頭は自分にはちょうどよい時期だった。

 

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【旅の準備】

諸々の手配をする。航空券はホテルとのセットチケットで予算圧縮を図る。旅程は3泊4日、1日目は稚内で宿泊し、早朝の船で礼文島に向かう。稚内から礼文島は数時間かかる。礼文島の宿は、島の南側にある民宿を2泊手配する。そもそも宿泊施設が少ないのだが、港近くにあるホテルはしっかり高い。貧乏旅行ではないがお金をかける旅ではないし、こぢんまりした民宿の方が旅情があるだろうとも思いそのようにした。島での旅程は1日目は港から民宿のある南側までのトレッキング、2日目は島の北側へのバス旅行という計画である。かなり歩くのでいつもは使わない多少丈夫なスニーカーを履いていく。これはもともとは野崎島に行く時購入したものである。

礼文島に行くという話を家族同僚にする。家族からはやたらとクマの心配をされる。礼文島にはクマはいないから大丈夫だよといってウェブページを見せようとするが、折悪く5月ごろクマが泳いで礼文島に来島したのではないかという疑惑を知らせるニュースがヒットする。うん。まあ、心配ないよ、としておく。

自分の職場には「夏は忙しくない」という伝承があるのだが、それが嘘だということを思い知らされているうち、なんだかんだで旅行の日となった。

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【DAY1 9月3日】

飛行機は羽田から10時30分ごろ飛び立つ。稚内空港には12時過ぎに到着する予定である。

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羽田から稚内はほとんどあっという間である。音楽を聴きながら寝ていたらもう到着していた。現地では独特なキャラクターがお出迎えしてくれた。

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なるほどね。

かくして稚内空港までは楽についたのだが、実は稚内市街と稚内空港はそれなりに離れている。そこで市街地行きのバスに乗るわけだが、おあつらえむきに空港と市街地の直行便、しかも最北端の宗谷岬経由で観光までできるという至れり尽くせり系バスが存在する。使わない手はない。

バスの途中、北海道的としか言いようのない風景を目の当たりにする。

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茫漠。ただただ茫漠。サロベツ原野というらしい。時折風力発電の風車があるが、それ以外は何にもない。途中、眺めがいいということで五分ほど停車する。降りるとほのかに動物のフンの匂いがする。自然。いや、大した自然ではないはずである。何しろ舗装道路が通っている。それでも思うところはある光景だった。

そうこうしているうちに宗谷岬に着く。

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最北端の地だからといって、特に何かあるわけではない。

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とはいえ来たんだなあという感慨はある。サイダーを飲みながら海を見る。海の先には樺太がある。いつか旅行に行きたい場所の一つである。稚内から船でいけるらしく、手軽にいけるなら今回行こうとも思ったのだが、手続きがいろいろあるらしく断念した。いつか巡り合わせで赴く機会があればいいなと思う。

 

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1日目の途中ですが、疲れたのでこの辺で。